ふっと意識が浮上し、そのまま目を開けると見知らぬ天井が見えた。どうやら自分は寝台に寝かされているようだと手触りのよい布地を感じる。ぐらつく視界の中、とりあえず起き上がろうと緩慢な動作で手をつくと、何か違和を感じた。

「っな、んだこれ」

自身と寝台を繋ぐ鎖がジャラリと音を立てる。両の手首に嵌められたソレに呆然とするしかない。細い作りのため外れないかと引っ張ってみるが、見た目の割に堅固で諦めるしかないようだ。

「どこなんだよ此処」

改めて現状を把握しようとぐるりと視線を巡らせるが、一度も目にした事のない場所のようで。途方に暮れるしかない自分を見下ろすと、着慣れている衣服ではなく薄布を重ねたようなものに着替えさせられていた。

「そうだ…アモン…」

恐らく衣服と共に取り上げられた剣。アモンの宿るソレは大丈夫だろうかと途端に不安になってくる。静かな部屋の中、誰がどんな理由で自分を此処に繋ぎ留めているのか…。先ず話の出来る相手がいなければ始まらないと、広い室内に響くように声を出す。

「すみません誰か、誰かいませんか!」

遠くへ吸い込まれるように反響しては消えていく。シンとした空間に誰もいないのかとため息を吐きかけた時、ゆっくりと扉が開かれた。弾かれたようにそちらに目を向けると、そこに現れた人物に一瞬呼吸が止まった。

「…は、くりゅう?」

無表情にこちらを見る相手は確かに白龍で。何か声を掛けたいと思いつつも彼の発する空気に何も言えなくなる。

なぜ、
どうして、

言いたいことは沢山あるのだが何一つとして言葉になってくれない。痛い位の沈黙が広がる中、ゆっくりとこちらへ歩み寄ってくる白龍に意識が引き上げられる。ひりつく喉を無視して音を零し出した。

「な、なあ白龍…此処はどこなんだ?」
「………」
「そういやお前、天山西部の方に行くとか…って…」

ひきつりそうになる口角を抑え、とにかく何かをと話すが依然として白龍は無言のままで。そうこうしている内に寝台のすぐ傍らまで彼が近付いていた。目の前でピタリと歩みを止めた相手はただ自分を見下ろしていて。

「…は、くりゅ」
「此処は煌帝国ですよアリババ殿」

ポツリとようやく届いた彼の声。しかしその内容に目を見開くしかない。

「ぇ、なん…どういう」

どういう事なのか。
冗談、ではなさそうだ。

「手荒なことをしてすみません。でも、アリババ殿が大人しくいらっしゃるとは思えなかったので」

強硬手段をとらせて貰いました。
次から次へと耳を疑うような理解の出来ない言葉の羅列。僅かに震えてくる身体を自覚しつつもヒクリと口角を上げる。

「な、んだよそれ。なあ何言ってんだよ白龍」

意味が分からない。

「あなたに告げるべき事はありません」
「っ、白龍!」
「…すみません。でも、」


(あなたを此処から出すつもりはない)


絶句するしかないその台詞。淡々とまるで義務のようにそう口にする白龍…そんな彼に急に胸が苦しくなった。

(なんで、そんな、顔)

そんな顔、するんだよ


「何、か…あったのか?なあもし俺に出来ることなら」
「…もう黙って下さい」
「ッ、!」

重ねようとした言の葉はしかし紡がれることは無かった。

「ふ、っ…ンンッ!」

唇に白龍のソレが合わせられ、初めての感覚が俺を支配し呼吸が上手く出来なくなる。決して荒くは無いのに深く滲むように心が蹂躙され、そうして固まるばかりの俺を寝台へと押し付けてくる。抗う術も理由も混乱の最中見付けられず、気付けば視界いっぱいに白龍の顔が広がっていた。

「、…はく…ッひ!?」

ゆっくり離された唇をぼんやり見つめていると、何故か着衣に手が掛けられ徐に乱される。それを慌てて押し止めようと白龍の手を掴むが、ゾッとするような冷たい眼光に貫かれた。

「手荒にしたくないんです。お願いですから抵抗しないで下さい」

無表情に、
でもその中に隠れ見える其れは…





「好きなんです…あなたのことが」





(なあ白龍、お前は何がこわいんだ?)








***






もはや衣服の役割を果たさない布の塊。その中にまるで溺れるように滑らかな肢体を横たえて。震える身に合わせて鳴る鎖はまるで俺を責めているかのように。

「ゃ、だ…っやぁあ」
「動かないで下さいアリババ殿」

潤滑剤を絡めた指を彼の未開の場へ忍ばせ、ぐちぐちと音を立てて暴いていく。潤滑剤を注ぎ足し注ぎ足し、時間をかけて開いていく其処。初めこそ冗談だろうとどこか希望を宿すような目で此方を見ていた彼は、けれど強引に身体を組み敷き後孔へ指を滑らせた途端激しく抵抗を示した。だが体勢が体勢のため上手く力が入れられなかったようで、多少手こずりはしたが上から自身の体重を掛けて押さえ込んだ。そうしてそのまま指を進めると一瞬息を詰め、とうとうぼろぼろと琥珀の瞳から涙を零し出してしまった。その時不意にぞわりと何かが背筋に走り、甘そうに映った彼の涙を唇で拭った。感じた衝動の名は分からない…だが俺はきっと一生この瞬間を忘れないのだろうと。

「ぁッ、ィ…ぃ、ぁ」

白龍の眼前に晒された孔は既に三本もの指を挿し入れられている。きつく閉じていた其処を我慢強く丹念に解していくと、徐々にやわらかくその様相を変えた。今はもう従順なまでに絞まりを緩め、淫猥に指を飲み込んでいる。当初突き立てられた指が痛いと泣き叫んでいたアリババも、今は小さく嬌声を上げるばかりで人知れず白龍は安心する。

「も、…ッゃ、ゃだ…許し、やだぁ」

ひんひんと涙を零し続けるアリババの頭を空いた手で撫で擦る。あやすような動作をしつつも後孔を弄る手は止めない自分に嘲笑が浮かんだ。

(今更、)

そう何もかも今更。
ならばもう、進むしかない。


「ぁ、あ、…ん、っン」

体液と潤滑剤が馴染み混じった液体がとろりとアリババの脚を汚している。長い間擦り立てられた其処は赤みを帯びてヒクヒクと煽動して。指で割り開けば真っ赤な内壁が欲汁を纏い、まるで水菓子のような様を露呈した。

「凄いですね…ここ」
「ッ、!ふ、ぅぅ…っ」

思わずそう感想を呟くと、いやいやと小さな子どものように首を左右に振り出した。そんな様ですら愛おしく自身の目には映り、そうしてズキズキと傷み痛む情には蓋をした。

「そろそろ…」

挿れます。
そう口にすると信じられないものでも見るような瞳が己を刺した。しかしそれには構わず指を引き抜き自身の纏う服を寛げる。

「待っ、うそ…ゃ、やだ、やだ白龍」

比ではない彼の身体の震えが伝わってくる。ガクガクと怯え涙する姿。

(嗚呼、ばかですねアリババ殿)

そんな顔をして

(そんな顔をしても、)





「あなたは、ばかだ」



「、ひッ…っ、ッーーッあ、!!」



無理矢理捻込んだ熱にアリババは声にならない悲鳴を上げた。圧死してしまいそうな存在感に犯され身体を痙攣させる。酷く努張した性器を少し動かし、指で散々なぶり腫れあがった場を擦り上げてやる。するとビクリと大きくアリババの身体が跳ね上がり、中空をさ迷っていた瞳の焦点が結ばれた。

「全部はいりましたよ」
「ぅ、そ…ッ、ゃ、やだ」
「切れてもいませんし、痛くは…無いでしょう?」

埋め込んだ性器をズルリと軽く引き抜けば、再び背をしならせ死にそうな声を上げる。

「も、やだ…お願っ、抜い…抜い、て」

そんなアリババの懇願を黙殺し、奥まった場所を目指してガツリと腰を進めた。

「ぃ、ーゃッ、!ぁ、ひッぃい」
「良さそう…ですね」
「ぁぐ…ッぅ、やッァンッ、ぁああッ!」

甘さを含み出した鳴き声に息を吐き出す。内壁はただ淫らに収縮し、涙や涎でぐちゃぐちゃになったアリババの顔と合わせて自身を追い詰めていく。

(これは…長くは保たないかもしれない)

そんな風に考えながらアリババの勃ち上がった性器に指を絡めた。こんなに余裕のない性交など初めてだ。

(あなただから、でしょうね)

きっと情けなく歪んだ表情。けれど後悔なんてまさか。

(アリババ、殿)

何をどれだけ願おうが、
あなたがいなければ意味が無い



(だからどうか、あなたは俺を許さないで下さい)

勝手なエゴであなたを縛り付ける俺を、きっとどうか。

































寄せて合わせた二度目の口付け…白龍にはそれが何故だがとても苦く感じた。




***






あらん様、この度は5000打企画にご参加下さり誠にありがとうございました!

百合の棘刺す私の春シリーズでアリババが初めて白龍に無理やり抱かれた時の話が気になってます。良かったら書いてください(>_<)…との事でしたが、ここここんなので宜しいですかね?何だかもうアレな話になってしまい申し訳ないですわあああ。本当消化不良と言いますか、よく分からない展開と言います…か…。我ながら着地点どころか全体的に見失ってしまいましたヽ(^。^)丿
くくく苦情はいつでもどうぞ(土下座)

このシリーズをお好きだと言って頂けて本当に本当に嬉しかったですありがとうございます!


それではリクエスト本当にありがとうございました!(*´▽`*)